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サッカー選手のための食事と栄養ガイドー世代ごとの傾向と対策ー

サッカーは世界中で最も人気のあるスポーツの一つですが、その競技レベルは年々上昇しています。

 

技術的要求だけでなく、体力的な要求も増加しており、選手のパフォーマンス最適化と健康維持において、栄養が果たす役割はますます重要になっています。

 

今回は、最新の研究結果を基に、サッカー選手のための食事と栄養ガイドー世代ごとの傾向と対策ーについて深掘りしていきましょう。

 

サッカー選手のための食事と栄養ガイドー世代ごとの傾向と対策ー

UEFAのエリートフットボール栄養ガイドライン

UEFAは最近、エリートフットボール選手向けの包括的な栄養ガイドラインを発表しました。この指針は、試合日やトレーニング日の栄養戦略から、体組成管理、ストレスの多い環境での栄養摂取、さらには文化的多様性を考慮した食事プランまで、幅広いトピックをカバーしています。

  1. 試合前:筋肉と肝臓のグリコーゲンを十分に補充するため、炭水化物(CHO)を多く摂取します。
  2. 試合中:30〜60gのCHOを摂取することで、疲労の蓄積を遅らせます。
  3. トレーニング中:CHOの摂取は重要で、必要に応じてタンパク質を3〜4時間おきに摂取することが推奨されます。
  4. 試合後:CHOとタンパク質を適切に摂取し、回復を促進します。

 

これらのガイドラインは、「食事優先」の原則に基づいています。つまり、サプリメントに頼るのではなく、まずは食事から必要な栄養素を摂取することを重視しています。

 

また、これらの推奨事項は男女両方の選手、審判、そして若手選手にも適用されます。

 

https://bjsm.bmj.com/content/55/8/416

 

女子サッカー選手の栄養摂取の現状

女子サッカーの人気と競技レベルが急速に向上している中、女子選手の栄養摂取に関する研究も進んでいます。ポーランドの女子プロサッカー選手を対象とした最近の研究では、栄養摂取の不足が明らかになりました。

  • 平均エネルギー消費量:2811 ± 493 kcal/日
  • 平均摂取エネルギー:1476 ± 434 kcal/日

この結果から、選手たちは必要なエネルギーの約半分しか摂取していないことがわかります。

 

  • 炭水化物摂取量:199 ± 20.6 g/日
  • 脂肪摂取量:47.3 ± 20.7 g/日
  • タンパク質摂取量:72.3 ± 24.2 g/日

特に炭水化物とタンパク質の摂取量が不足しています。また、ミネラルやビタミンの摂取も十分ではありませんでした。カリウム、カルシウム、マグネシウム、ヨウ素、ビタミンD、E、B1、葉酸などが不足していました。

 

これらの栄養素の不足は、選手のパフォーマンスだけでなく、長期的な健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。女子サッカー選手の栄養教育と適切な食事プランの提供が急務であることがわかります。

 

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30934885/

 

 

アカデミー世代の栄養摂取パターン

若手選手の栄養摂取も重要なトピックです。イングランド・プレミアリーグのアカデミーに所属する選手を対象とした研究では、年齢による栄養摂取パターンの違いが明らかになりました。

対象となったのは、U13/14(13-14歳)、U15/16(15-16歳)、U18(18歳以下)の3つの年齢群です。

7日間の食事日記を分析した結果

  1. 総エネルギー摂取量(kcal·kg-1·day-1): U13/14 (43.1 ± 10.3) > U15/16 (32.6 ± 7.9) > U18 (28.1 ± 6.8)
  2. 炭水化物摂取量(g·kg-1·day-1): U13/14 (6 ± 1.2) > U15/16 (4.7 ± 1.4) > U18 (3.2 ± 1.3)
  3. 脂肪摂取量(g·kg-1·day-1): U13/14 (1.3 ± 0.5) > U15/16 (0.9 ± 0.3) = U18 (0.9 ± 0.3)

興味深いことに、年齢が上がるにつれて体重あたりの摂取量が減少しています。これには複数の要因が考えられます

 

  • 成長と代謝の変化:若い選手は急速な成長期にあり、代謝が非常に活発です。
  • 体組成の変化:年齢とともに筋肉量が増加し、体脂肪率が低下する傾向があります。
  • トレーニング効率の向上:年長の選手はより効率的にトレーニングできるようになり、同じ運動量でもエネルギー消費が少なくなる可能性があります。

また、タンパク質摂取に関しても興味深い結果が得られました

  • U15/16のタンパク質摂取量(1.6 ± 0.3 g·kg-1)は、U13/14(2.2 ± 0.5 g·kg-1)とU18(2.0 ± 0.3 g·kg-1)より少なかった
  • すべての年齢群で、1日のタンパク質摂取分布に偏りが見られた: 夕食(~0.6 g·kg-1) > 昼食(~0.5 g·kg-1) > 朝食(~0.3 g·kg-1)

 

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27633998/

 

筆者の所感

末っ子の長男がクラブチームに所属。U-9でトレーニング中である。小柄であたりが弱く食が細い。夏バテをして「食べれない」「吐きそう」などを胃腸系にダメージがある様子。

そんなことから論文を調査しました。

 

必要な栄養とは炭水化物とタンパク質を中心にその他の栄養を摂取する。これは理解できます。

ただ、育成年代には体格に対する摂取量が少なくなるのは驚きの結果でした。なんとなく、高校生ぐらいになるといっぱい食べるイメージがありましたが、体重に対してだとまだ足りてないってことですよね。

また、女性サッカー選手はミネラル系も不足しがちなので注意ですね。

栄養摂取のタイミングは、試合前と試合後は現実的に可能ですが、トレ中やハーフタイムは無理ですよね。

 

トレーニングや試合前後に絞って栄養補給を考えていく方が良いでしょうね。

 

まとめ

これらの研究結果から、サッカー選手の栄養摂取には改善の余地があることが明らかになりました。特に以下の点が重要です:

  1. 個別化された栄養プラン:年齢、性別、競技レベルに応じた栄養戦略が必要です。
  2. エネルギー摂取の適正化:特に女子選手とアカデミー世代の選手において、必要なエネルギー摂取量を確保することが重要です。
  3. 栄養バランスの改善:炭水化物、タンパク質、脂肪、ビタミン、ミネラルのバランスを考慮した食事プランが必要です。
  4. 1日の栄養摂取分布の最適化:特にタンパク質摂取において、1日を通じてバランスよく摂取することが推奨されます。
  5. 栄養教育の強化:選手、コーチ、保護者に対する栄養教育プログラムの実施が重要です。

サッカーの競技レベルが年々上昇する中、栄養管理はパフォーマンス向上と怪我予防の鍵となります。

今後は、これらの研究結果を実践に移し、選手一人一人に最適化された栄養戦略を開発・実施していくことが課題となるでしょう。

 

また、長期的な追跡調査を行い、適切な栄養摂取が実際のパフォーマンスや健康状態にどのような影響を与えるかを検証することも重要です。

 

サッカー界全体で栄養に対する意識が高まり、科学的根拠に基づいた栄養管理が一般化することで、選手のパフォーマンス向上と健康維持、そしてサッカーそのものの発展につながることが期待されます。

 

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