脳卒中後の復職を目指す患者さんを、どのように進めたらいいの?
そんな疑問にお答えします。
脳卒中後の復職は本当に難しいイメージがありますよね。でも、そのイメージだけが先行していることも多いのではないでしょうか?
リハビリ専門職や医療機関でしっかりと復職に対する準備や手続きを進めることで、脳卒中後の復職がスムーズに行える症例もいます。
今回、脳卒中後の復職についての具体的な流れについて解説していきます。
Contents
脳卒中後の復職の現状
2012年から3年間にわたり、当院で脳血管障害や頭部外傷で入院していた18~59歳の高次脳機能障害患者159人の就労状況調査が行われました。その結果、就労希望者140人中88人(63%)が復職しました。復職した44人のうち43人(98%)が退院後3カ月以内に復職しましたが、38人(27%)は復職できませんでした。その中には、医療者の介入を拒否して退院した14人も含まれています。
1990年以降の脳卒中後の復職に関する論文概観では、発症前有職の8,810人の復職率が平均44%であり、復職成功の要因として、リハビリの提供、雇用主の柔軟性、社会保障、家族や介護者からのサポートが挙げられました。しかし、リハビリサービスの内容が不明瞭なまま支援が不十分であることも指摘されています。
労働者健康安全機構の研究では、脳卒中リハビリ患者464例について追跡調査が行われ、原職復帰が42%、配置転換や新規就労を含めると51%が復職したことが報告されました。復職時期に関しては、発症3-6ヵ月後と1年半後にピークがあり、早期復職群と遅延復職群では、ADL能力の差や医療機関からの支援の有無などが有意な要因とされています。
脳卒中に罹患した労働者に対する治療と就労の両立支援マニュアル
復職にあたっては、医療機関でも、復職を視野に入れたリハビリメニューが大切。また、携わるサポーター(家族・職場)の理解も不可欠。
時期は、最短でも3ヶ月はリハビリが必要。ただ、そこで上手く復帰出来なくても、1年半までは何らかの形で復職の可能性はあります。
回復期リハ病棟などの専門機関であっても、機能訓練やADL向上トレーニングまでってことは多いですよね。職業復帰まで突っ込んだリハビリメニューを組んでくれる機関は少ないのが現状だと思います。
脳卒中後復職の具体的な進め方
本人の復職への意向を確認
本人が障害需要していなかってり、病識がないこともあると思います。
ひとまず、それは抜きにして単純に本人が復職への思いがあるのかを聴取することが必要です。
有無だけでなくその思いの強さなども含めて聞いておきましょう。
障害の程度と予後について検討
障害の程度を考えて復職の可能性が現実的なのかを検討します。
まだ発症から間もない時期では、まだ回復の可能性が残されているので、まずは機能やADLの回復に専念していきます。
おおむね(約2-3か月程度)障害が固定されてきた時点から機能予後を見定めていき、復職の可能性について評価を進めていきます。
人によっては、発症早期の時点で機能やADLが発症前の80%くらい回復している人もいるでしょう。そのような方は機能訓練と並行して復職の検討も進めていきます。
入院のリハビリで何処まで詰めるかを検討
医師や看護師をはじめソーシャルワーカーとの復職への取り組みを進める合意形成をします。
リハビリ部門では、機能訓練だけでなく復職に必要な動作や模擬練習を行っていきます。
家族とも復職について合意形成
家族にも、病状説明と合わせて復職についても話を詰めていきます。
場合によっては、家族から復職を懸念されるケースもあるので、医療機関だけ暴走しないように注意です。
職場担当者へ病状説明
患者と家族に病状説明と復職に向けて合意形成が得られれば、次には職場担当者へ病状説明と復職の可能性について話をすすめます。
企業側がすでに復職自体を考えていないことも多くありますから丁寧な説明が必要です。
復職に向けたリハビリ
現職の仕事内容について細部まで聴取しましょう。入院中なので実際仕事場面でリハビリを行うことはできませんから、模擬的な活動の分析が必要です。
仕事内容に近しい模擬課題を提示し評価をすすめます。
職場と現状共有し現職復帰が配置転換かを検討
模擬課題を評価を職場担当者と協議して、現職復帰とするか配置転換とするかを検討していきます。
その際に、復帰後の労働状況についても細かく話を詰めは方が良いでしょう。
まとめ
脳卒中後の復職についてまとめます。
まず、患者自身の状態を改善するために、リハビリやサポートを提供することが重要です。次に、雇用主や社会が柔軟性を持ち、適切な支援を提供することも大切です。
患者自身に焦点を当てると、病状や障害に応じたリハビリプログラムを提供することが助けになります。例えば、ADL(日常生活動作)能力向上のためのトレーニングや、疲労感の管理、精神的なサポートなどが含まれます。また、患者や家族に対する教育やカウンセリングも有効です。病状を理解し、適切なケアを提供することで、自立を支援できます。
同時に、雇用主や社会全体が柔軟性を持ち、復職支援をすることも重要です。適切な職場の調整や柔軟な労働条件、必要なサポートを提供することで、患者が復職しやすくなります。社会保障や法的な枠組みも適切に整えられると、患者の再就職を促進できます。
医療分野では、復職支援の方法やサービスの改善が求められています。適切なリハビリテーションプログラムやサポート体制を整えることで、患者の復職率を向上させるための取り組みが必要です。
総合的に、患者の個々の状態を把握し、適切なリハビリテーションやサポートを提供すると同時に、社会全体での理解や支援の枠組みを整えることが重要です。