リハビリテーション

【わかりやすく解説】なぜ起こるの?脳卒中後の痙縮のメカニズム

こんにちは!本ブログ「neta-bolt.com」を運営しているトレ説@NETAです

脳卒中後の痙縮はなぜ起こるの?

いったいどんなメカニズム?

脳卒中後の痙縮をわかりやすく解説してよ!

そんな疑問を解決していきます。

 

脳卒中後や脊髄損傷後は痙縮が出現することありますよね。

その痙縮は足や手の筋肉が硬くなり動かしづらくなりますね。体をうまく動かすことができず、日常生活に介助を要する状態になってしまうことも少なくありません。

でも、痙縮はなぜ起こるのでしょうか?今回は聞きなれない痙縮のメカニズムについてわかりやすく解説していきます。

痙縮とはーわかりやすく解説ー

神経は障害を受けると、機能が消失してしまう「陰性徴候」と、元々はなかった機能が解放されてしまう「陽性徴候」とがあります。

陰性徴候=運動麻痺や感覚障害など

陽性徴候=痙縮や筋緊張亢進など

 

痙縮の定義

1980年にLanceさんにより「上位運動ニューロン障害の代表的な症状のひとつであり、伸張反射の相対的亢進により生じる筋伸張速度に依存した受動運動に対する抵抗の増大」とされています。

痙縮をわかりやすく解説

脳や脊髄の神経が障害された時の症状の一つで、反射が敏感になっている状態で、手足を早く動かされた時に力が入ってしまうこと。

 

痙縮を理解するための筋肉・神経の基礎

痙縮を説明するにあたり筋肉と神経の基本的な構造を理解しないといけません。

筋肉は、「錘外筋」と「錘内筋」の2つに分けられます。
「錘外筋」は、筋肉を主に動かす役割でなのに対して「錘内筋」は筋肉の長さを感知するセンサーの役割を担います。その錘内筋の中に筋紡錘があります。

筋肉に脳や脊髄からの指令を伝える神経は2つあります。「α運動ニューロン」「γ運動ニューロン」です。
錘外筋には「α運動ニューロン」が脊髄から指令を伝える
錘内筋には「γ運動ニューロン」が脊髄から指令を伝える

α運動ニューロンだけが活動すると錘外筋だけが働きます。でもγ運動ニューロンは活動していませんので錘内筋は働かずセンサーとしての役割を果たしません。筋緊張は低下し急な外力に反応できない(伸張反射が起こらない)状態になります。

なのでα運動ニューロンだけでなくγ運動ニューロンも同時に活動して、錘内筋もセンサーとして働くことで急な外力にも対応でき、正常な動きができるようになる訳です。
このことを「α–γ連関」と呼びます。

痙縮はなぜ起こるの?

痙縮のメカニズムー筋肉と末梢神経編ー

錘内筋を司るγ運動ニューロンの過剰な活動で錘内筋がビンビンに反応しやすくなっている状態と考えることができます。

γ運動ニューロンは正常であれば脳からの指令をある程度落ち着かせています(抑制)。でも脳や脊髄が障害されるとその抑制が効かなくなり、指令がダイレクトに伝わってしまい、必要以上に錘内筋が感度をあげてしまう結果として、痙縮が起こると考えられています。

でも、痙縮単体の問題に対しては筋紡錘は関与しないという報告もあり。一定の見解をえていないもの事実です。

痙縮が長く続く状態になり、時間が経つと筋肉などの軟部組織が硬くなり「拘縮」も相まってきます。

筋肉は過去形状を記憶する機能があるとされています。

例:せん断力を受け続けると柔らかくなり。固定されると硬くなる。

例:いっぱい運動した後にリラックスしているのに筋肉が硬くなる。

thixotrophy:柔らかさが時間経過とともに変化する。
stiffness:外力に対する変形のしずらさ=剛性

拘縮により筋紡錘の不動が硬さを生むことで筋紡錘の反応性を敏感にしてしまいます。
そうなると、筋紡錘は感度がビンビンで伸張反射が亢進した状態となってしまいます。

まとめると、痙縮は脳や脊髄の影響を受けるが、持続すると拘縮になり筋紡錘が感度ビンビンになり伸張反射が亢進する

痙縮のメカニズムー脊髄編ー

臨床的には脊髄の興奮性を腱反射を診て判断することが多いです。しかし、動作時の脊髄の興奮性までは評価することができません。

でも筋電図を使うことで脊髄の興奮性をみる方法があります。脊髄運動神経の興奮性の評価は、「H波」で評価することができます。

この「H波」は姿勢や課題の難易度によって変化することが知られています。

H波の振幅は、臥位>座位>立位>歩行>走行 と姿勢により変化し臥位でもっとも高く走行で低いとされています。

姿勢や課題の難易度によって脊髄の興奮性が変化することを覚えておきましょう。

 

痙縮のメカニズムー脳編ー

痙縮は錐体路の障害で出現すると、専門書には多く書かれていますがどうやら錐体路だけではないようです。

近年の見解は、錐体路(皮質脊髄路だけ)の障害では、末梢の随意性が障害させるだけで痙縮は出現しないとされています。

なので現在は「錐体路だけが痙縮を生むのではなく、錐体外路系も関与している」。

もう少し具体的に言えば、「皮質脊髄路に加え、皮質網様体路が障害されると痙縮が出現する」これが現在の定説となっています。

まとめ

脳卒中後の痙縮のメカニズムをわかりやすく解説していきました。

痙縮は筋肉や神経レベルでも起こりますし、脊髄や脳などの上位の中枢が原因でも出現します。

筋肉と末梢神経では筋紡錘、α・γ運動ニューロンが重要です。痙縮が持続すると拘縮へと移行します。そうなると筋紡錘の感度が高くなってしまうので、筋肉や関節が拘縮状態に移行することを予防することが大切です。

脊髄レベルでは、痙縮を誘発する脊髄の活動性は姿勢により変化することがわかっています。痙縮が弱まる姿勢に注目してみましょう。

脳では、錐体路だけを注目するのでなく錐体外路系も関与していることを覚えておきましょう。

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