立ち上がり動作のポイントは?
立ち上がり動作の重心の位置は?
正しい椅子の高さや手すりの位置は?
そんな疑問を解決していきます。
立ち上がりは日常生活で何回も行う動作ですよね。人は1日に約60回も椅子から立ち上がりをしているデータもあります。年をとると足腰が弱り年々立ち上がりが辛くなりますよね。立ち上がりの動作をスムーズに行うポイントを理解しておくことはとても大切ですよね。
今回は、立ち上がり動作の重心の位置のポイントと立ち上がりの椅子の高さ、手すりの位置の決め方について解説していきます。
Contents
立ち上がりのポイントは重心位置
「足をしっかり引いて」とか「身体を倒してお辞儀するように」と立ち上がる時に声掛けしますよね。実はこれには理由があります。
立ち上がる時には、重心が床に接している足の真上にまで来ないと立てません。
これは運動力学に基づいているので誰にでも当てはまります。
なので、横から見て重心と足が一直線になる所で、丁度椅子からお尻を離すことが出来る状態になりますね。
身体の合成重心と足が床に接している点が、横からみて一直線になる所まで、身体を前に倒さないといけません。
なので、身体合成重心が足の位置にまでいくことがポイントになります。
椅子の高さや手すりなどを変えることで、身体合成重心の移動のしやすさが変わってきます。
立ち上がりの椅子の高さの決め方
椅子を高くすると立ち上がりやすくなる理由
椅子の高さを高くすると立ち上がりやすくなり、低くすると立ち上がりづらくなりますよね。
椅子を高くすると立ち上がりやすくなるのは、大きくは2つ理由があります。
- 骨盤が起きる
- 重心の移動距離が短くなる
股関節が深く曲がらないので骨盤が起こしやすくなります。結果として姿勢が良くなります。
姿勢が良くなると上半身の重心位置が前方に位置するので身体重心の位置はより足に近くなります。
結果的に身体重心と足の位置が近いので容易に立ち上がりが可能になるわけです。
椅子の高さを変えると膝と股関節にかかる負担を変化させることができます。
椅子の高さを64cmから43cmに低くすると股関節と膝関節にかかる負担(ピークモーメント)が2.4から1.9倍に増加します。
高い椅子が合う人
膝や股関節の筋力が弱い人や膝や腰に痛みがある人は、椅子の高さが高い方が負担が少なくすみます。
1日に60回も繰り返す動きになりますので、1回の負担の減らす工夫はとても大切になりますね。
低い椅子が合う人
今は筋力は弱いけど、このまま高い椅子にして筋肉をあまり使わないようにしてしまうと弱ってしまう。そう考える時には、あえて低い椅子にすることで、膝や股関節周囲の筋力を使わせることもできます。
日常的に立ち上がりを繰り返しますので、生活がトレーニングになります。
1日に60回も繰り返す動きになります。身体の状態に合わせて、1回の負担を減らすことや日常をトレーニングに変える工夫も必要です。
立ち上がりの手すりの位置の決め方
手すりの位置を変えると立ち上がりやすくなる理由
手すりの高さを変化させることで、立ち上がり時の上方向へ身体を持ち上げる力と前に身体を倒す力をコントロールすることができます。
低い手すり(座っている時の大転子の位置)
手すりなしと比較して上方向への力(床反力垂直成分)が-13.7%
股関節屈曲角度・足関節背屈角度・体幹前傾角度が増加
重心の前方移動(COG)が増加
股関節伸展筋へ負担が増えるが、膝への負担は少ない
高い手すり(立っている時の大転子の位置)
手すりなしと比較して上方向への力(床反力垂直成分)が-7.1%
股関節屈曲角度・体幹前傾角度が小さい
膝関節伸展筋へ負担が増えるが、股関節への負担が少ない
低い手すりが合う人
股関節の動きに制限がなく、可動域が十分にあること。そして、身体を前に十分倒せることです。
筋力では、股関節周囲(特に股関節伸展)の筋力が強い人には低い手すりが合うでしょう
肩がうまく上がらない人や円背は強い人なんかも低めの手すりの方が良いです。
高い手すりが合う人
身体を前に倒すことが難しく、股関節周囲(股関節伸展)の筋力が弱い人には高い手すりが合うでしょう。
立位が不安定で手すりにしがみつく様にして立つ人は、高めの手すりの方が手すりと壁が支えとなることもあります。
今回参考にした論文達
まとめ
立ち上がりのポイントは重心の位置にあります。
立ち上がるには、重心と床に接している位置が真っ直ぐにならないと立ち上がれません。なので、重心を足の位置まで移動することが大切です。
椅子の高さや手すりの位置を変えると重心の移動のしやすさを、環境の変化で作ることも出来ます。
足の筋力や可動域をみて、立ち上がりの重心の位置と足の位置をみると、立ち上がり易くする為にはどうしたら良いのかを考えることが出来ますね!