脳卒中後の自立歩行の再獲得はどれくらいなの?
脳卒中後の歩行スピードはどれくらいになればいいの?
脳卒中後の歩き方はどうしたらいいの?
そんな疑問を解決します。
脳卒中後の歩行の再建は日常生活移動のためには必要不可欠です。
でも、脳卒中は半身の麻痺や感覚障害・その他にも多くの脳関連の症状がでます。
なので、歩行の再建はできたとしても歩き方(歩容)が左右非対称になりがちです。
また、歩行の自立には歩行スピードが関連していることは古くから知られています。では、歩行スピードを上げるためにはどのような要素が必要なのでしょうか?
今回は、歩行スピードと歩容についても私見も含めて解説していきます。
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脳卒中後の自立歩行再獲得は何%?
脳卒中後自立歩行回復の範囲 41~85% (Dallas 2008; Feigin 1996; Kwah 2013; Verbeek 2011; Wade 1987; Wandel 2000)
全く問題なく歩ける人 18% (Lord 2004)
歩行が再獲得される人の割合に相当バラつきがありますね。脳卒中は運動機能だけでなく感覚障害や高次脳機能障害などさまざまな症状が出現します。
患者さんの症状により大きく歩行再獲得に影響することは間違いありません。
自立歩行が可能になる歩行スピードは?
屋内歩行自立レベル
0.4m/s 10m歩行時間では25秒
屋外歩行レベル
0.8m/s 10m歩行時間では12.5秒
歩行スピードを上げるために必要な要素は?
- 足関節の底屈モーメント
- 股関節の伸展角度(trailing limb angle)
足関節底屈モーメント
歩行時の後ろの足の足首が下に向く力(足関節底屈モーメント)が、体を前に推し進める推進力を生みだします。
股関節の伸展角度(trailing limb angle)
歩行時の後ろの足の股関節の角度が大きいとそれだけ歩行の推進力を生みだします。
脳卒中後の歩行再獲得には足関節を下に向ける筋力と股関節を伸展する筋力が必要なわけです。
ただ単に筋力トレーニングをするのではなく、歩行に類似したトレーニングや目的をしっかり持ったトレーニングメニューが重要だと言われています。
脳卒中後の歩容パターン
2動作前型交互歩行
前述したように足関節の底屈モーメントと股関節を伸展方向に持ってきてtrailing limb angleを作る歩容は、正常歩行に近い歩行であり効率が良いです。
そのため、歩行速度が早くなります。しかし、脳卒中後は股関節・体幹の不安定性が強くありますので患者さんによっては難しい歩容でもあります。
3動作揃え型歩行
麻痺している足を先に出して、麻痺していない方の足を麻痺した足に揃えて歩く方法です。
足関節の底屈モーメントと股関節を伸展方向に持ってきてtrailing limb angleを作ることはできません。
正常歩行からは逸脱しているため歩行効率は良くありませんし、歩行速度ももちろん早くありません。
ただ、比較的安定して足で体を支えられますので、ゆっくりですが安定した歩容になります。
歩行スピードから考える歩行の再獲得の歩容パターンは?(私見)
屋内歩行自立レベルの0.4m/s以上で歩ける方には、2動作前型交互歩行で足関節底屈モーメントとtrailing limb angleを向上させるリハビリテーションをすすめることをオススメします。
屋内歩行自立レベル0.4m/s以下や歩行自体が監視が必要な方には、3動作揃え型歩行も検討する必要があるでしょう。
まとめ
脳卒中後の歩行の再獲得には足関節の底屈モーメントの増大とtrailing limb angleをつくることが重要です。
それらを改善させるためには2動作前型交互歩行。つまり正常の歩行様式に近づけないといけません。しかし、その歩行形態は脳卒中後の方にとっては難易度が高いことであり、症状によっては獲得が難しいです。
歩行スピードに応じた歩容の変更も検討することが大切です。