嚥下障害ってどんな病気?
嚥下障害はどうして起こるの?
嚥下障害のリハビリはどんな方法があるの?
そんな疑問を解決します。
脳卒中後や高齢になると飲み込みの機能。嚥下機能が障害されます。
嚥下機能が障害されると、好きな食べ物が食べれないし、水分を自由に飲めなくなります。
でも、嚥下障害の現状を意外と知られていません。
今回は嚥下障害の実際と治療法について解説していきます。
Contents
嚥下障害の疫学
脳卒中後の嚥下障害は27%から64%
Gordon 1987 ; Wolfe 1993 ; Odderson 1995 ; Smithard 1996 ; Mann 2000 ; Singh 2006a ; Rofes 2013
嚥下障害は脳卒中の約半分で2週間で改善。脳卒中生存者の15%は1ヶ月で嚥下障害か残存
Smiard 1993
自立したした高齢者の37.6%で嚥下障害がある。肺炎の診断で病院に入院した高齢者の55%が嚥下障害
Roy Ann Otol Rhinol Laryngol. 2007
嚥下障害の兆候を示した入院患者では、30日後の栄養失調と死亡率の有病率と1年間の追跡調査が高い
Cabre Age Ageing. 2009
脳卒中後の嚥下障害は27%から64%ですので幅がありますね。嚥下障害の有無については正確な検査方法が国際的に確立されていないこともあるかもしれません。
自立した高齢者ですら約40%が嚥下障害があります。ですので、脳卒中後は少なからず嚥下障害があると考える方が良いと思います。
加齢による嚥下機能の変化
- 咽頭収縮筋の収縮力の低下し、咽頭に唾液および食物が残留しやすい
- 高騰の位置が低下し、嚥下する時の喉頭挙上が不十分
- 上部食道括約筋を閉じている筋肉の機能不全が生じ、喉頭の閉鎖が不十分になる
- 輪状咽頭開口部の幅の縮小
- 筋肉活動、嚥下の持続時間の増加
- 下顎下筋群の筋電図活動の振幅の低下
嚥下のメカニズム
嚥下は5つのフェーズによって分類することができます。
先行期
先行期には食物が何であるのか?どんな食べ物であるのか?認知する時期です。
認知症や脳卒中により高次脳機能障害を有する状態になると先行期が障害され、何を食べているのかすらわからなくなります。
昔は大変好きだった食べ物ですら食べる意欲がなくなったりします。
準備期
口の中に食べ物を送り込んで、嚙み砕き(咀嚼)、食物を塊(食塊を形成)にする過程です。
口腔期
舌を使って食塊を喉の奥(咽頭)にまで送り込んでいく時期です。
舌だけでなく、口腔内を陰圧にすることで送り込みをスムーズにする作用があります。
その口腔内の圧を高めるには唇を閉じる必要があります。唇をしっかりと閉じる動きが大切になります。
また送り込みは舌の動きも重要になります。舌の運動性を高めておくこと重要になります。
咽頭期
咽頭期には、咽頭から食道に食塊を送り込みます。この時は嚥下反射は発生します。
嚥下反射により軟口蓋が挙上して、鼻からの空気の流れ道を塞いでくれます。
そして、舌骨と喉頭が上前方に移動します。それと同時に喉頭蓋谷が下降して声門を閉鎖し気道を塞ぎます。気道を塞ぐことにより誤嚥予防します。
食道期:食べ物を胃へ送り込む
食道入口部が開き食道に食塊を胃に送り込みます。
嚥下障害者のよく起こる問題
嚥下の期と相に許容範囲を超えてずれ込みが起こってきます。
咀嚼に時間がかかったり、送り込みが悪かったりして口腔期が長い。
咽頭反射が起こらず、喉頭部分に食物が貯まってしまう。
食道の入り口がうまく開かず、なかなか食物が食道に入っていかない。
嚥下障害の5期別リハビリ方法
先行期でのリハビリ
先行期は「食物が何であるか?」「どんな味がするのか?」「どうやって食べるのか?」それを認識する段階です。
実際の食事場面をイメージさせる練習は効果的です。映像を見せてトレーニングすることもオススメします。
また、カードを使って食べ物を見せて、「どんな味がする?」「どうやって食べる?」などの会話を通して食べ物を認識を高める方法が良いでしょう。
準備期でのリハビリ
口腔内の環境が問題になることがあります。「口の中が乾燥している」「入れ歯がない」「残歯があり歯茎を傷つけている」
口腔ケアにより口腔内の清潔を保つことが大切です。
また、歯科による歯や義歯の治療が必要なことも多くあります。
口腔期でのリハビリ
舌の動きと唇の動きを出す練習が必要になります。
舌の運動は、自分で舌を動かすことができる人であれば上下左右・前後などあらゆる方向に動かす練習をします。
舌と唇を総合的に動かす発声練習を紹介します。
「パ・タ・カ」「パ・タ・カ」「パ・タ・カ」と発声します。
「パ」は唇を閉じて口の中の圧を高める運動
「タ」は口の中の上の壁に舌をつける運動
「カ」は喉の奥の方で舌を動かす運動
咽頭期でのリハビリ
嚥下反射を起こす部分の練習になります。
空嚥下練習
息を止めて→ごっくんと唾を飲む→息を吐く
嚥下反射を誘発する練習になります。また、食物が喉も奥に溜まっている時に除去する練習にもなります。
喉のアイスマッサージ
綿棒を水で濡らし凍らして、口の中・喉の奥・咽頭をアイスマッサージします。
冷却刺激をすることにより嚥下反射を誘発させます。
食道期でのリハビリ
食道の開きを強くする筋力練習
頭部挙上練習(シャキア法)
喉頭を前上方に動かす筋力を鍛える練習になります。方法は頭を上げて60秒保持、休息を60秒、それを30回を繰り返す。1日3回のトレーニングになります。
相当辛いトレーニングになりますが、世界中から効果が検討されている方法です。
ただ、首の痛みやめまいなどの合併症があるようですので注意が必要です。
まとめ
嚥下障害のメカニズムが理解できたと思います。
嚥下の5期を細かく見ていき、治療することが重要になります。
嚥下障害とは簡単に治るものではありません。根気強く治療していくことが大切になります。
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