脊髄損傷ってどんな病気?
脊髄損傷はどんな生活ができるようになる?
乗移りってどうやってやるの?どれくらいかかるの?
そんな疑問を解決します。
脊髄損傷って下半身不随や手も動かなくなることがある重症な損傷です。
どんな動作の練習をしてどんな生活をできるようになるのでしょうか?
脊髄損傷者の乗移りはどうやってやるの?移乗動作のポイントを詳しく解説していきます。
Contents
脊髄損傷とは
世界中に4,000万人います。20歳〜35歳の若い男性の多いです。脊髄損傷者の1%が子供で交通事故やスポーツに怪我によるものです。スポーツではサッカーが多く、脊髄損傷の部位は頚椎が60〜80%、残りは胸椎と胸椎の損傷だと言われています。
体幹や下肢筋の麻痺が重度の人の場合
脊髄損傷になると日常生活を送るには、下肢や体幹の麻痺が残った場合は上肢を多く使用する生活様式に変更することが必要になります。
リハビリテーションでは、脊髄損傷特有の動作パターンの習得を繰り返し練習していきます。その際、上半身の筋力・柔軟性の向上が特に重要になってきます。
上半身に過度なストレスを強いられる動作パターンのため、肩・肘・手首の損傷の多くあるのが実際です。そのため、上肢の過度なストレスが原因で、肩の怪我(40〜60%)肘の怪我(5〜16%)手首の怪我(15〜48%)が発生します。
上肢のケアをしながら生活していくことが大切であることがわかると思います。
下肢筋の麻痺が軽度の場合
下肢筋の麻痺がある場合は、麻痺している筋肉がどの筋肉なのかにもより、歩くことが可能かも変わってきます。
また、下肢筋に異常な緊張(痙縮)が出現することにより歩くことが難しくなったり、関節が硬くなることもあるでしょう。
足首程度の麻痺であれば、下肢装具を使用して長距離を歩いて移動することも可能です。
脊髄損傷者の損傷部位別獲得動作
頚椎1〜4番の損傷
頚椎の上の方は呼吸する筋肉を動かす神経が支配しています。損傷を受けると呼吸することが難しくなりますので、人工呼吸器管理が必要な状態です。
動かせる部位は首より上になります。口を使って本のページをめくったり、文字を書いたりすることになります。
車椅子は電動車椅子で顎で操作するタイプの車椅子になります。
頚椎5番の損傷
肘を曲げる筋肉と肩をすくめることができます。肘を曲げることしかできませんので、手首や肘を伸ばす方に関節拘縮が起こる危険性があります。
肘や手首周囲の関節拘縮予防の可動域運動が必要です。
車椅子はジョブスティックタイプの車椅子での操作が可能です。しかし、乗移りは介助が必要です。
食事はスプリントなどを使用して半分自分でできるレベルです。
頚椎6番の損傷
自分で手首を反らせることか可能です。テノデシスアクションを利用して指でものを掴むことも可能です。
食事や上衣も自分でできるようになります。肘を伸ばすことはできないので、補助する装置を利用することでヘアセットなどもできるでしょう。
車椅子への乗移りは、一人では難しいですが、トランスファーボードを利用することで介助量が軽減します。
車椅子自走は握力がないので早くはこぐことはできませんが、車椅子のハンドリムを工夫することで短距離であれば自走も可能です。
長距離の車椅子移動は電動車椅子が必要です。
頚椎7番8番の損傷
頚椎7番では肘の伸展が可能で、頚椎8番では指を曲げることが可能です。
日常生活活動および移動はほとんどが自分でできるようになります。
下衣は助けがあればできるようになります。
普通型の車椅子で自由に移動ができます。
自動車の運転も可能です。しかし、足が動かないので手のみでの運転操作をできる専用車が必要になります。
胸椎11番12番の損傷
日常生活、排泄(腸膀胱のケア)、手動の車椅子移動が自分でできます。
下部胸椎の損傷では治療的な歩行トレーニングができます。ただ、日常的な移動手段になるレベルの歩行の獲得は難しいです。
腰椎1番2番の損傷
歩行補助装置を利用して、短距離であれば歩行で移動することができるレベルです。ただ長距離移動は車椅子が必要です。
腰椎3番4番の損傷
膝をロックし、足首に装具をつける。そして松葉杖を使うことで歩行することが可能です。長距離の歩行も問題なくできるようになります。
腰椎5番の損傷
すべての日常生活は自分でできるようになります。
損傷部位により獲得できる動作が大きくことなり、生活スタイルが変わってくることがわかったと思います。
体幹や下肢が効かない、重度の麻痺の人は車椅子への乗移りができるかで、大きく生活の自由度が変化します。
脊髄損傷者にとっては移乗動作獲得がとりわけ重要なのです。
Rehabilitation of spinal cord injuries
脊髄損傷者の移乗動作パターン
手を遠くの位置に置く乗移り(HH-A)
頭を前方に倒して体幹を強く前傾することが重要です。
距離の遠い時に使う乗移り方法です。どちらかというと車椅子側の手の力が軸となります。移る側の手は距離が遠いので肩への負担が強くなります。
手を近くに置く乗移り(HH-I)
頭を前方に倒して体幹を強く前傾することが重要です。
移る側の手を体の近くに置くので力が入りやすいです。どちらかというと移る側の手が軸となり乗移りする方法になります。
体を垂直に持ち上げる(TU)
体幹を垂直に持ち上げる形になりますので、体幹の機能が全く機能したい人は上肢への負担が強くなります。
乗り移る側が高い時にはこの方法がとても有効です。
下記に表は両方の手にかかる負担をそれぞれの乗移り方法での違いを表しています。
HH-Iは肩への負担が少ないことがわかります。脊髄損傷者は特有の動作パターンを繰り返し練習するため、どうしても上肢への負担が強くなり痛みや怪我をすることがあります。
特に、高齢者の脊髄損傷者はすでに肩の痛みを持っていたり、加齢変性により腱板断裂しやすい状況であったりしますので肩への負担は注意したいところです。
移乗動作獲得までの日数
残存機能別での移乗動作獲得率と獲得までの日数に関する研究です。
対象者は92人で平均年齢52歳。改変Frankel分類にて残存機能を測定し分類しています。
改変Frankel(A : B : C : D : E = 17: 8 : 32 : 35 : 0 例)に分類しました。
移乗動作獲得までに日数
ABC群114日でかかるのに対してD群は65日で獲得可能です。
自分でできる確率はABC群は56%に対して、D群は83%です。足まで機能が残っている人は乗移り達成ができるでしょう。しかし、障害の重度な人は達成するには時間を要し自立する確率も少なくなります。
脊髄損傷者の動作自立までの期間 ―改良Frankel分類に着目して―
まとめ
脊髄損傷者は上肢を過度に使用した生活になるため、上半身を鍛える必要がある。しかし、同時に怪我も多く上肢のケアも重要である。
脊髄損傷者は損傷部位により獲得動作の予後が大きくことなる。
特に体幹や下肢が働かない人がもっとも苦労する動作が乗移り動作
乗移り動作は3つのパターンがあり、肩への負担が少ない乗移り方法の検討が必要
乗移りに要する期間は障害が思いと114日、軽いと65日前後である。動作獲得率は障害が思いと悪くなる。