心臓が悪いと運動は危ないの?
心臓が悪くても運動ってどれくらいやってもいいの?
そんな疑問を解決していきます。
高齢になると心臓が悪いのはつきもの。心臓が悪い人でも特に多いのが心不全ですよね。心不全を持っている人に運動をさせても良いのか?どんな状態が危ないの?どれくらいやっても大丈夫なの?そこらへんが良く分からない人が多いと思います。
今回は、心臓が悪い人(心不全)の運動の注意点と効果的な運動強度について解説していきます。
Contents
心不全の運動療法で見るべきポイント
絶対禁忌
過去1週間以内における心不全の自覚症状(呼吸苦、易疲労性など)の増悪
不安定狭心症または閾値の低い(平地ゆっくり歩行2METsで誘発される)心筋虚血 手術適応のある重症弁膜症、特に大動脈弁狭窄症 未治療の運動誘発性重症不整脈(心室細動。持続性心室頻拍) 活動性の心筋炎 急性全身性疾患または発熱 運動療法が禁忌となるその他の疾患(中等症以上の大動脈瘤、重症高血圧、血栓性静脈炎、2週間以内の塞栓症、重篤な他臓器障害など) |
絶対禁忌で注目するポイントは、2Mets程度の運動で誘発される自覚症状です。まず、2Mets程度の運動がどのくらいのものなのかをおさえましょう。
料理や下ごしらえ、洗濯物を洗う、着替え、会話をする、食事、身の回り、シャワーを浴びる、タオルで拭く、ゆっくりした歩行 10mを11秒くらいの速度で(平地、散歩または家の中)
上記の運動程度で呼吸苦や疲労を訴える患者には注意が必要です。
運動トレーニングの中止の基準
心室頻拍(3連発以上)
R on Tの心室期外収縮 頻発する単一源性心室期外収縮(30%以上) 頻発する多源性の心室期外収縮(30%以上) 2連発(1分間に2回以上) |
心室期外収縮(PVC)の出現数・出現様式によって運動中の突然死のリスクを評価するLown分類が参考になります。心電図モニターを着けた状態での運動療法が必要となるのが難点です。
相対的禁忌
NYHA Ⅳ度または静注強心薬投与中の心不全
過去1週間以内に体重が2kg以上増加した心不全 運動により収縮期血圧が低下した例 中等症の左室流出路狭窄 運動誘発性の中等症不整脈(非持続性心室頻拍、頻拍性心房細動など) 高度房室ブロック 運動による自覚症状の悪化(疲労、めまい、発汗多量、呼吸困難など) |
相対的禁忌のポイントは血圧と脈ですね。血圧は運動後のどの程度上がっているかを測って、上がり過ぎていることが危ないと思っている人も多いと思いますが、実は上の血圧が運動により下がってしまうことの方が危険なんです。
また、脈もリスクを把握する上では重要な要素です。心室系の不整脈はもちろんですが、心室細動や房室ブロックなどは心電図でないとわかりません。事前に心電図をとっているのであればしっかりと把握しておくとよりリスク管理ができますので、おさえておきたいポイントです。
禁忌とならないもの
高齢
左室駆出率低下 補助人工心臓(LVAS)装着中の心不全 植込み型除細動器(ICD)装着例 |
禁忌とならないものは、左室駆出率の低下で、心エコーではEFと記載されます。これまでは左室駆出率の低下が心機能のポイントでしたが、左室の拡張が悪くても左室のポンプ機能が低下することが明らかになってきています。なので、左室駆出率の低下だけでは運動の禁忌とはなりません。総合的判断が必要ですね。
心不全の正しい運動負荷
【心不全発症後1〜2週間程度】
屋内歩行50~80m/分×5~10分間または自転車エルゴメータ10~20W×5~10分程度から開始する 自覚症状や身体所見の目安にして1ヶ月程度をかけて時間と強度を徐々に増加する。 安静時HR+30bpm(β遮断薬投与例では安静時HR+20bpm)を目標HRとする方法 |
【心不全発症後1ヶ月程度】
a)最高酸素摂取量(peak VO2)の40~60%のレベルまたは嫌気性代謝閾値(AT)レベルのHR b)心拍数予備能(HR reserve)の30~50%,または最大HRの50~70% c)Borg指数11~13(自覚的運動強度「楽である~ややつらい」)のレベル |
心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2012年改訂版)
自覚運動強度での運動の目安
ボルグスケールと修正ボルグスケールの違い
ボルグスケール | ボルグの表現 | 修正ボルグスケール | 修正ボルグの表現 | 最大酸素摂取量 |
6 | 0 | 感じない | ||
7 | 非常に楽である | 0.5 | 非常に弱い | 40% |
8 | 1 | やや弱い | ||
9 | かなり楽である | 2 | 弱い | 50% |
10 | 3 | |||
11 | 楽である | 4 | 多少強い | 60% |
12 | 5 | 強い | ||
13 | ややきつい | 6 | 70% | |
14 | 7 | とても強い | ||
15 | きつい | 8 | 80% | |
16 | 9 | |||
17 | かなりきつい | 10 | 非常に強い | 90% |
18 | ||||
19 | 非常にきつい | |||
20 |
ボルグスケールと修正ボルグスケールでは多少表現が異なります。また、ボルグスケールは最大が20なのに対して修正ボルグスケールは10段階評価になります。
ガイドラインや論文には、ボルグスケールであったり修正ボルグスケールを使用しているものがあったりしますので混乱しないように注意したいところですよね。
まとめ
心不全の運動療法には絶対禁忌となる危険な状態があります。危険な状態を察知するには患者本人の呼吸苦や疲労感の観察が必須です。その際の運動強度が2Mets程度で誘発されている状態では運動療法の適応になるかを検討する必要があります。
より正確にリスクを評価するためには心電図モニターを運動療法中に着けて観察しながら行う必要があります。その際特に心室性の不整脈の有無が頻繁に出現しているかがポイントとなります。
運動療法の強度ですが、自覚運動強度を参考にすると良いでしょう。しかし、ガイドラインや文献によってはボルグスケールと修正ボルグスケールを使用しているものがあるので、中止が必要です。
[…] 心臓が悪いと運動はダメ?運動の中止基準や正しい運動負荷を解説高齢になると心臓が悪いのははつきもの。心臓が悪い人でも特に多いのが心不全ですよね。心不全を持っている人に運 […]
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